【注意!】大切なのは「ロウソクの科学」ではない。

吉野彰さんがノーベル化学賞を受賞されました。

おめでとうございます!

日本から次々に科学系のノーベル賞受賞者が輩出される事は、同じ科学に関わる者として嬉しい限りです。

さて、吉野さんが化学に興味を持つきっかけとなった「ロウソクの科学」という本に注目が集まっていますね。

電磁誘導などで有名なファラデーが、1861年に著した本です。

かなり昔の科学ですから、内容的に古くなった部分はあるかもしれませんが、大変良い書籍で、多くの科学者が影響を受けたと言われています。

ニュースなどで話題になり、「ロウソクの科学」が増刷されて売れ行きを伸ばしているようです。

ここの記事では「うちの子にも読ませたら、理科が好きになってくれるかも!?立派な学者になってくれるかも!?」という教育的な意味で読んだ方、または読もうとしている方に向けて書きます。

結論から言って、私はこの本が重要なのでは無いと考えます。

吉野さんは小学生の頃に読んだそうですが、恐らく一般的なお子様にこの本を渡しても、特に感銘を受けることはあまり無いと思います。

逆に「科学って難しい」という、マイナスな印象を持ってしまう人もいるでしょう。 ※ロウソクの科学を読まれたい場合、分かりやすく書き換えられた書籍が複数ありますので、読み比べて自分に合った物を購入してみてください。

吉野さんは、小学校の先生から薦められたということですが、吉野さんの学力や興味、性質など考えた上でのことでしょう。

棋士の藤井聡太さんが大きな話題となった時、彼が子どもの頃に遊んでいたおもちゃが流行りました。

しかし、そのおもちゃによって、同じように知育効果が現れるかどうかは疑問です。

歌手の平井堅さんは、 サザンオールスターズの「旅姿六人衆」がきっかけで歌手を志したそう。

彼が中学2年生で初めてこの曲を聞いたとき、涙が流れたそうです。

しかし、この曲を聞いた人全てが泣く訳でもなく、歌手を目指し始める訳でもありません。

私は小さな頃に「振動反応」という科学現象を見たことで感銘を受け、科学に強い関心を持ち、今に至ります。

振動反応は、複数の液体を混ぜて放置するだけで色が変わり続けるという、大変不思議で複雑で興味深い現象です。

ところが、サイエンスショーで振動反応を見せても、同じように感銘を受ける子どもたちは非常に少ないです。

多くの子どもたちは「まぁ、なんかスゴイ。でも…だから何?」という感じでしょう。

サイエンスショーでは、1公演の中でたくさんの実験を行います。

でも、感銘を受ける現象は、人それぞれです。

私でも「そこ!?」と驚くような、小さな現象に強い興味を持つ人もいれば、強烈なインパクトがなければ全く興味を示さない人もいます。

科学現象よりも解説の内容に驚き、私を質問攻めにするほど興味を抱く人もいます。

人は千差万別です。

だから、同じものを見聞きしても、感銘を受けるポイントはそれぞれ。

興味の向き方もそれぞれ。

適した学問や職業もそれぞれです。

最も大切なのは「巡り合わせ」です。

自分に合ったものに出会えた時、「ドキドキ・ワクワク・ウキウキ」した感じを受けるはずです。

その気持ちを忘れず、その後に生かしましょう。

「ロウソクの科学を読むこと」「旅姿六人衆を聴くこと」「振動反応を見ること」が無意味と言っている訳ではありません。

様々な経験を通して、貴方に合ったものを見つけてほしいのです。

あるすごい人が「この本が良い」「この勉強法がいい」と言ったからといって、それは「貴方にとっての(貴方のお子様にとっての)成功の秘訣ではない」のです。

まずは良い巡り合わせがありますように。